腎臓内科
- HOME
- 腎臓内科
ひとことに「腎臓内科」と聞いても、そもそも腎臓ってどこにあるの?体の中でどんなはたらきをしているの?と思われる方も多いと思います。ここでは、腎臓のはたらきと、腎臓の機能が低下するとどんなことが起こってくるか、お話したいと思います。
腎臓のはたらき
腎臓は、腰より上の背中側に位置しており、肝臓と脾臓の後ろに背骨を挟む形で左右にひとつずつあり、そら豆のような形をしています。ひとつひとつは人の握りこぶしより少し大きいくらいの大きさです。
腎臓には心臓から送りだされる血液の約4分の1が流れ込むほどに重要な臓器で、人が眠っている間も不眠不休で実に多くのはたらきをおこなってくれています。以下に、そのはたらきについてご説明します。
[1]尿(おしっこ)をつくる
腎臓の大きな役割のひとつは、尿をつくることです。腎臓の中にある糸球体と呼ばれる構造で血液は濾過(ろか)され、この濾過を通して老廃物や体の中で毒素となるもの、余分な塩分や水分を尿として体の外へ排出してくれます。また、いったん濾し出された原尿から体に必要なものは再びポンプで汲み上げて、体内に留めるはたらきをしています(再吸収と言われる機能です)。
[2]水分・電解質を調節する
腎臓は尿をつくることで、体内の水分量(体液量)やイオンバランスを一定に保ってくれたり、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割も担っています。また、このはたらきを通して体の中が弱アルカリ性になるように維持され、このことは体を健康に保つうえでとても大切な機能です。
[3]血圧を調節する
腎臓は、塩分と水分の排出量をコントロールすることによって血圧を調整しています。血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、塩分と水分の排出量を減少させることで血圧を上げます。また、腎臓は血圧を維持するレニンと呼ばれるホルモンを分泌し、血圧が低いときには血圧を上げる方向にはたらきます。
[4]ビタミンDの活性化
尿をつくること以外にも腎臓は大切な役割を果たしています。骨をつくるのに必要な栄養素であるビタミンDは、魚やキノコ類に多く含まれていますが、体内で活性型ビタミンDに変化させることによってはじめて機能します。活性化されたビタミンDはカルシウムを腸から体内に吸収させるのに必要な要素です。このビタミンDを活性化させるのも腎臓の役割のひとつです。
[5]造血ホルモンの分泌
腎臓で作られるエリスロポエチンと呼ばれる造血ホルモンによって、骨髄の中にある細胞が刺激され、血液のなかでも体中に酸素を運ぶ赤血球が作られます。したがって、腎臓の機能が悪化すると貧血が進行してきます。
腎臓が悪くなる原因は?
腎臓が悪くなる原因はたくさんありますが、特に多いのが加齢で、誰でも年齢とともにある程度腎機能は低下していきます。しかし、加齢による腎機能低下に加え、好ましくない生活習慣が、さらなるマイナス要因となります。高血圧・糖尿病・脂質異常症の三大生活習慣病は、腎臓の働きと密接な関係があります。とくに高血圧は、血管に過度な負荷を与えますので、注意が必要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあると腎機能低下が加速することがはっきりわかっています。これらの生活習慣病をお持ちの患者さんは、「生活習慣病の治療」がすなわち「腎不全の治療」となってきますので、日頃の生活管理と治療をしっかりとおこなって腎臓を守っていく必要があります。
腎臓が悪くなるとどんなことが起こるのか?
腎臓の働きが悪くなるとろ過ができず尿そのものが出なくなり、尿中に捨てられるべき毒素が蓄積して尿毒症と呼ばれる状態になります。症状としては全身倦怠感や食欲低下、意識障害など様々です。腎臓が悪くなると体液量の調節がうまくいかず体のむくみにつながりますし、イオンバランスが崩れると、疲れやめまい、筋肉のけいれんなど、さまざまな不調が現れてきます。
腎臓と血圧は密接に関係しており、血圧の上昇は腎機能の低下の比較的早い段階から現れます。腎臓のはたらきが低下すればするほど高血圧になり、高い血圧は腎臓にさらに負担をかけて腎臓の機能を悪化させる、という悪循環に陥ります。
腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収されなくなって骨がもろくなりやすくなります。また、腎臓の働きが悪くなると、エリスロポエチンという造血ホルモンが作られなくなるため、血液(赤血球)が十分に作ることができず貧血になることがあります。これを「腎性貧血」と呼びます。
腎臓の機能が低下するとこうした様々な症状がでてきますが、これらは腎機能がよほど悪くならない限り自覚症状がないことがほとんどです。疲れやすさや体のむくみなどを感じたら、「年齢のせい」と考えず、念のためご相談ください。
いつ病院を受診したらいいの?
腎臓の機能が低下すると老廃物がうまく排泄できなくなったり、体に必要なたんぱく質まで尿と一緒に排泄してしまったりします。困ったことに、腎臓はとてもがまん強い臓器であるため、末期腎不全になるまで自覚症状が出にくいという特徴があります。
慢性腎不全は、腎臓病により数カ月から数十年の年月をかけて徐々に病気が進行します。この病気の怖さは、初期には、自覚症状はほとんどなく、気付いたときには相当病気が進行している可能性が高いこと、そして腎臓の機能はいったん悪化すると基本的には二度と正常には戻らないことです。ですから、症状が出てから受診しても、その時点で腎機能は手遅れに近い程に低下していることが多く、それを防ぐためにも定期健診を必ず受け、早期に腎臓病を見つけ、治療介入することが大切です。
どんなサインがあったら受診したら良いか?
健診などでは多くの検査項目がありますが、腎臓についてはどれをチェックすればよいのでしょうか。健診や人間ドックで測定する項目の中でも「尿検査」や「クレアチニン」という値が腎臓の機能を表すものになります。
尿検査
健康診断や人間ドックでは必ずと言っていいほど尿検査が含まれていますし、学校健診などでも尿検査は毎年おこなわれています。尿検査の中でも注意したいのが、尿潜血と尿蛋白です。
尿潜血;腎臓からの出血と、膀胱などの尿路からの出血の二種類があり、潜血が陽性の場合は詳しい検査をおこないます。原因疾患としては慢性腎炎、遺伝性腎疾患、尿路系疾患(膀胱がん、尿管がん、前立腺がんなど)の可能性があります。
尿蛋白;尿潜血と違い、尿蛋白は腎臓から出ていることがほとんどで、糖尿病性腎症や起立性蛋白尿(体質性蛋白尿)、尿潜血を伴っている場合は糸球体腎炎という病気であることが多いです。
クレアチニン
腎機能を間接的に推定できる血液検査の項目で、腎機能が低下するにつれてこの値が上昇します。この値と年齢から計算した推定糸球体濾過量という数値がその人の腎機能の点数(100点満点の〇〇点)というふうに考えます。目安として、この点数が60点以下になると一般的に腎不全と呼ばれ、この点数が15点を下回ると末期腎不全と定義され、日本では多くの患者さんが透析療法を受けることになります。しかしこの点数とはあくまで目安であり、その患者さんの性別や筋肉量にも左右されますので、個人個人での評価と定期的な検査値の推移のチェックが大切です。
尿検査やクレアチニン値で異常値が出た場合はもちろんですが、「尿の色が赤みを帯びている」「便器の水が通常より泡立っている」などの心配な症状がありましたらぜひお早めにご相談ください。
腎不全の進行は予防できるのか?
例えば、熱中症などによって体の水分が急激に失われ、体内を循環する血液量が少なくなって腎臓に流れる血液量が減少すると、一時的な腎機能障害を発症することがあります。このようなケースは急性腎不全と呼ばれ、点滴による脱水の補正など早期に治療を施せば、腎機能の正常化が期待できます。
一方、長い時間をかけて少しずつ腎機能が悪化した状態が慢性腎不全です。加齢のほか、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを長期にわずらっていたことが原因で腎機能が徐々に低下した状態であり、この状況では基本的に腎機能は元に戻りません。
繰り返しになりますが、腎臓はかなり悪くなるまで自覚症状が現れにくいため、気付いたときには、透析が必要なほど悪化していることがあります。早期発見のためにも、40歳を過ぎたら毎年の健診をお勧めしています。毎年受診を進めるわけは、腎臓の病気の中には腎機能障害の進行がとても早いものもあるため、数年に1回の健診では早期発見に間に合わないかもしれないからです。
腎臓病について、気になることや気になる症状がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。